

日曜の午後、一条家の一階の居間では、母親と娘が紅茶を飲みながら歓談していた。
「悠美さん。今度の学校の方はどうですか?」
真由美はそう言いながら転校したばかりの悠美を少し心配そうに見つめた。
「大丈夫よ、今度の学校は女子校だし、みなさんお嬢様育ちと聞いているから。」
悠美は、とても楽しそうに話を続けた。
「それにね、もう、新しいお友達が出来たの。今度遊びに連れてきてもいい?」
「ええ、いいわよ。でも、どんな家庭のお子さんなの?」
真由美は少し心配気に聞いてみた。
そもそも進学前の高校1年の途中で転校をしたのには訳があった。
いじめであった。
一条家は祖父が創めた貿易、運輸関係の仕事が功をなし、一代で財閥となった。
祖父の跡を継いだ悠美の父親の俊之は、さらに全国チェーンのデパート経営に手を出し、これも成功をなし、その世界では人望も厚かった。
母親の真由美は、もともと公爵の家に育ち、何不自由のない生活を送り、24歳の時に今の夫と見合いの末に結ばれた。
結婚後は何不自由のない生活を送ることが出来たが、二人は中々子宝に恵まれなかった。 しかし、結婚後5年目にようやく一粒種の悠美が生まれた。
悠美は、大病を患うことなくすくすくと育ち、その美貌も母親譲りで、世間では評判の美少女であった。
身の回りの世話は、全てお手伝いが行い、当然教育に関しても一流の家庭教師を付けて英才教育を行っていた。
悠美が地元でも有名な進学高校に入学して間もないころ、送り迎えを している運転手から気になることを聞いた。
悠美がどうやら苛めにあっているようであると言うのだ。
そういえば、そのころの悠美は、何となく元気さが感じられないことに真由美も気付いていた。
いろいろと調べたり、悠美に問い質したりした結果、2年生の女子生徒3人に苛めを受けていたことがわかった。
すぐに学校に対して措置をとるように申し入れ、その後相手の両親からの謝罪もあり、一応解決はした。
しかし、悠美自身は登校拒否を始めてしまい、毎日家庭教師の下で勉強をしていた。
そのようなことから、一家は悠美の将来のことを考え、良家の子女ばかりが通うという今の女子高校に転校を決めたのであった。
「びっくりしないでよ。その友達のお父様は貿易商で、お母様は宝石デザイナー何ですって」
自慢気に話す悠美。
「そうですか、仲良くしないといけませんよ。それと、御勉強の方も今まで以上にしっかりとしないといけませんね」
話が勉強の方になり、悠美は言葉数も少なくなった。
「はい。お母様」
「こちらでも優秀な家庭教師を探さないといけませんね、お父様に相談してみましょう」
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